農地を転用する場合に必要となる手続について<農地の転用をお考えの皆様へ>

はじめに

「土地を持っているけれども、祖父母や両親はその土地で農作業をしていたな…。
その土地に建物を建てたり、その土地を駐車場として整備するためには何か手続は必要なのかな…?
勝手に建物を建てたり、駐車場として土地を勝手に整備していいのかな…?罰則はないのかな?」

このような疑問をお持ちの方が多いです。このような疑問をお持ちの方へ必要となる手続である農地転用手続について、その概要を記述します。

農地転用とは?

農地とは、耕作の目的に供される土地のことをいいます(農地法第2条第1項)。

「耕作」とは、土地に労働及び資本を投じ肥培管理を行って作物を栽培することをいいます。
言い換えれば、土地に対して、手間暇やお金をかけて、肥料をあげたり、草刈り等の管理をして、農作物を栽培することを意味しています。

そして、「耕作の目的に供される土地」には、現在耕作をしている土地のほかに、現在は耕作をしていなくても、耕作をしようとすればいつでも耕作できる土地(休耕地、不耕作地)も含まれるとされています。
参照:平成12年6月1日12構改B第404号農林水産事務次官依命通知

農地の具体例として、①田②畑③果樹園④牧草採草地等が挙げられます。

農地転用とは、農地を農地以外に変えることをいいます。

例えば、農地を住宅や工場等の建物敷地や駐車場等に変えること農地転用に該当します。

この農地転用には、原則として、農地法に基づく転用許可が必要となり、その許可を得るために必要となる手続を農地転用手続といいます。

農地転用許可制度の目的

農地を転用する際に原則として農地法に基づく許可が必要であるとした目的は、食料の安定供給の基盤である「優良農地の確保」と農業以外の土地利用との調整を図り、農地転用を農業上の利用に支障が少ない農地に誘導することにあります。

すなわち、目的の考え方は、

私たちが生活していくうえで食料は必要不可欠なものですね。

その食料を生み出す基礎となるのは農地ですね。

されど、私たちの生活を向上させていくうえで必要となる農地以外の土地の利用方法もありますね。

そこで、両者のバランスをとりますよ。

具体的には、農地を農地以外に転用するときには、なるべく農業利用に支障が少ない農地を対象とすることにしましょう。

そのチェック機能を行政が果たし、みなさんへの食料供給に悪影響を与えないようにしますから、農地を農地以外に転用するときには、法律を根拠とした手続きに沿ってちゃんと許可を取得してくださいね。

(⑦許可を得ずにした農地転用は、みなさんへの食料供給に悪影響を与える可能性があるから、元の状態に戻してもらいますよ…さらには罰則もありますよ。

(⑧だって、私たちが生活していくうえで必要不可欠な食料に関係することですから…

ということです。

農地を転用する場合に必要となる手続とは?

農地を転用する場合に必要となる手続には、農地法第4条に基づく手続と農地法第5条に基づく手続があります。

農地法第4条に基づく手続が必要となる場面は、農地の所有者はそのままで、農地を農地以外の目的で利用する場合です。
例えば、①農地に資材を置く②自宅敷地を農地まで拡張して跡継ぎの息子夫婦を迎えること等です。

他方、農地法第5条に基づく手続が必要となる場面は、農地の所有者以外の方が、その所有者から買ったり、借りたりして農地を農地以外の目的で利用する場合です。
例えば、①農地を買ってそこに家を建てる②近隣の工場のため、農地を借りて駐車場にすること等です。

このように、転用が必要となる場面の違いによって、農地法を根拠とした求められる手続が異なります。

そして、手続によって、①許可申請書及び②添付書類を農業委員会を経由して都道府県知事等に提出することで、原則として、都道府県知事等の許可を受けなければなりません(農地法第4条第1項本文、第5条第1項本文)。

なお、農林水産大臣が、農地転用許可制度を適正に運用し、優良農地を確保する目標を立てる等の要件を満たす市町村を指定し、都道府県と同様の農地転用許可権限を委譲する「指定市町村」制度が運用されていることから、農地法には農地転用許可権者につき「都道府県知事等」と規定されています(農地法第4条第1項本文括弧書き)。

また、平成28年4月1日(第5次地方分権改革一括法による改正農地法施行日)から、4ha超の農地転用も都道府県知事等の権限になりました(農林水産大臣との協議は必要です)。

そして、農地法に基づく「指定市町村」や、地方自治法に基づく事務処理特例で都道府県から市町村に権限移譲が行われ、当該市町村から事務委任されている場合は、農業委員会が許可を行います。

参照:農地法に係る市町村への権限移譲について (niigata.lg.jp)

もっとも、農地を転用して住宅や工場等を建設する場合には、農地法以外にも、「農業振興地域の整備に関する法律(農振法)」や「都市計画法」等の他法令によって、建設等が規制される場合がありますので、他法令による許認可等が得られる見通しがない場合には、農地転用は許可されないことに注意が必要となります。

農地転用許可の基準

農地転用を農業上の利用に支障が少ない農地に誘導すること、すなわち、市街地に近接した農地や生産力の低い農地等から順次転用されるように誘導するため、①立地基準(農地区分)②一般基準により転用の可否が判断されます。

①立地基準(農地区分)農地をその営農条件及び周辺の市街地化の状況により区分し、許可の可否を判断する基準のことをいいます。
ⅰ、農用地区域内農地:市町村が定める農業振興地域整備計画において農用地区域とされた区域内の農地
原則不許可
ⅱ、甲種農地:市街化調整区域内の農業公共投資後8年以内の農地、市街化調整区域内の集団農地で高性能農業機械での営農が可能な農地
原則不許可
ⅲ、第1種農地:集団農地(10ha以上)、農業公共投資対象農地、生産力の高い農地
原則不許可
ⅳ、第2種農地:農業公共投資の対象となっていない小集団の生産力の低い農地、市街地として発展する可能性のある農地
第3種農地に立地困難な場合等に許可
Ⅴ、第3種農地:都市的整備がされた区域内の農地、市街地にある農地
原則許可

②一般基準(主なもの)農地転用の必要性、確実性及び周辺農地等への被害の防除措置の妥当性などの観点から求められるものをいいます。
ⅰ、事業実施の確実性:資力と信用があるか、転用の妨げとなる権利を有する者の同意があるか、遅滞なく転用されるか、他法令による許認可が得られる見込みがあるか等。
ⅱ、被害防除:土砂の流出・崩壊等災害を発生させる心配がないか、周辺の営農条件に支障がないか等。
ⅲ、一時転用の場合:利用後、すみやかに農地として原状回復されることが確実か、所有権以外の権利設定か。
ⅳ、農地の集積:地域における担い手に対する農地の集積に支障がないか等。

転用をしたい農地の①立地基準、②一般基準の両方を満たしている場合に限り、許可を受けることができます。

参照:農地法 | e-Gov法令検索

参照:農地転用許可制度(農地法第4条・第5条) – 新潟県ホームページ (niigata.lg.jp)

違反転用したり、許可を受けた申請内容どおりに転用しなかったら…

許可なく転用した場合や、転用許可を求めた申請内容どおりに転用していない場合等は、農地法に違反することになり、工事の中止や原状回復等の命令を受ける場合があります(農地法第51条第1項)。

また、違反転用をすると個人は3年以下の懲役または300万円以下の罰金、法人の場合は1億円以下の罰金が科せられます(農地法第64条、第67条)。

参照:農地法第51条第1項

「都道府県知事等は、政令で定めるところにより、次の各号のいずれかに該当する者(以下この条において「違反転用者等」という。)に対して、土地の農業上の利用の確保及び他の公益並びに関係人の利益を衡量して特に必要があると認めるときは、その必要の限度において、第四条若しくは第五条の規定によつてした許可を取り消し、その条件を変更し、若しくは新たに条件を付し、又は工事その他の行為の停止を命じ、若しくは相当の期限を定めて原状回復その他違反を是正するため必要な措置(以下この条において「原状回復等の措置」という。)を講ずべきことを命ずることができる。

一 第四条第一項若しくは第五条第一項の規定に違反した者又はその一般承継人
二 第四条第一項又は第五条第一項の許可に付した条件に違反している者
三 前二号に掲げる者から当該違反に係る土地について工事その他の行為を請け負つた者又はその工事その他の行為の下請人

四 偽りその他不正の手段により、第四条第一項又は第五条第一項の許可を受けた者」

参照:農地法第64条

「次の各号のいずれかに該当する者は、三年以下の懲役又は三百万円以下の罰金に処する。

一 第三条第一項、第四条第一項、第五条第一項又は第十八条第一項の規定に違反した者
二 偽りその他不正の手段により、第三条第一項、第四条第一項、第五条第一項又は第十八条第一項の許可を受けた者

三 第五十一条第一項の規定による都道府県知事等の命令に違反した者」

参照:農地法第67条

「法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務又は財産に関し、次の各号に掲げる規定の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人に対して当該各号に定める罰金刑を、その人に対して各本条の罰金刑を科する。

一 第六十四条第一号若しくは第二号(これらの規定中第四条第一項又は第五条第一項に係る部分に限る。)又は第三号 一億円以下の罰金刑
二 第六十四条(前号に係る部分を除く。)又は前二条 各本条の罰金刑」

さいごに

田や畑を耕作目的以外に使いたい…早く工事を始めたい…許可を受けたが、気が変わり当初の内容とは違う目的で使いたい…などの土地利用の目的によってお悩みをお抱えの方も多いと思います。

農地転用手続では、許可申請書に転用計画を具体的に記入することが求められますし、また、転用に際して行う被害防除策の概要も具体的に記入をすることが求められます。さらに、許可申請書の内容を立証するための多くの添付書類を用意する必要があり、提出機関等との打ち合わせも必要となります。

一般の方にとりまして、このように各方面との打ち合わせをはじめ、許可申請書やその内容を立証するための多くの添付書類を整えていくために、多くの時間や労力をかけることに対しては多大なご負担をお感じになられることと思います。

それでもご自身の利用目的に沿った土地活用に対しては、原則として、農地法等の関係法令によって農地を転用することへの規制(ルール)が設けられています。

農地の転用につきまして、少しでもご心配なことがありましたらお気軽にお問い合わせ下さい。

お問い合わせ – アクシアークス行政書士事務所 (axiarqs.com)

桃の花

 

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