はじめに
前回の記事では、農地の転用許可制度についての概要を記述しました。
農地を転用する場合に必要となる手続について<農地の転用をお考えの皆様へ> – アクシアークス行政書士事務所 (axiarqs.com)
農地転用許可制度(農地法第4条・第5条) – 新潟県ホームページ (niigata.lg.jp)
「土地を持っているけれども、祖父母や両親はその土地で農作業をしていたな…。
その土地に建物を建てたり、その土地を駐車場や資材置き場として整備するためには何か手続きは必要なのかな…?
勝手に建物を建てたり、駐車場や資材置き場として土地を勝手に整備していいのかな…?」
このような疑問をお持ちの方が多いです。今回は、このように疑問に思われている方へ必要となる手続である農地転用手続について、その手続の順序とその概要を記述します。
手続の順序
- 対象となる農地の調査
- 農地の転用が可能かどうかの調査
- 農地転用が可能である場合に手続が必要となる関係行政機関の調査
- 農業委員会及び関係行政機関との事前の打ち合わせ
- 申請書類及び添付書類の作成準備・確認
- 関係行政機関へ必要書類の提出/農業委員会へ必要書類の提出
- 調査会への出頭
- 区部会及び総会による承認
- 承認を経て農地転用許可が下りる
農地を転用しようとする場合、概ねこのような手続の順序となります。
<①対象となる農地の調査>
はじめに、対象農地の全部事項証明書を取得します。
全部事項証明書は、法務局で発行を受けることができるもので、土地の情報が記載されているものです。
全部事項証明書は、表題部(土地の表示)と権利部(甲区)(所有権に関する事項)で構成されていますが、権利部(乙区)(所有権以外の権利に関する事項)や共同担保目録が記載されている場合もあります。
この全部事項証明書の表題部②地目を確認します。
②地目の欄に「田」、「畑」と記載されていると、その土地は農地であると判断できます。
そして、権利部(甲区)(所有権に関する事項)には、所有権者が記載されています。
このように転用対象地の全部事項証明書を確認することで、農地か否か、誰が所有している農地か等を判断できることになります。
<②農地の転用が可能かどうかの調査>
次に、そもそも転用可能な農地に当たるのかをチェックすることになりますが、このチェックには高度な専門性が必要となります。
一般的な判断基準は以下のとおりです。
①立地基準(農地区分):農地をその営農条件及び周辺の市街地化の状況により区分し、許可の可否を判断する基準のことをいいます。
ⅰ、農用地区域内農地:市町村が定める農業振興地域整備計画において農用地区域とされた区域内の農地
➡原則不許可
ⅱ、甲種農地:市街化調整区域内の農業公共投資後8年以内の農地、市街化調整区域内の集団農地で高性能農業機械での営農が可能な農地
➡原則不許可
ⅲ、第1種農地:集団農地(10ha以上)、農業公共投資対象農地、生産力の高い農地
➡原則不許可
ⅳ、第2種農地:農業公共投資の対象となっていない小集団の生産力の低い農地、市街地として発展する可能性のある農地
➡第3種農地に立地困難な場合等に許可
Ⅴ、第3種農地:都市的整備がされた区域内の農地、市街地にある農地
➡原則許可
②一般基準(主なもの):農地転用の必要性、確実性及び周辺農地等への被害の防除措置の妥当性などの観点から求められるものをいいます。
ⅰ、事業実施の確実性:資力と信用があるか、転用の妨げとなる権利を有する者の同意があるか、遅滞なく転用されるか、他法令による許認可が得られる見込みがあるか等。
ⅱ、被害防除:土砂の流出・崩壊等災害を発生させる心配がないか、周辺の営農条件に支障がないか等。
ⅲ、一時転用の場合:利用後、すみやかに農地として原状回復されることが確実か、所有権以外の権利設定か。
ⅳ、農地の集積:地域における担い手に対する農地の集積に支障がないか等。
転用をしたい農地の①立地基準、②一般基準の両方を満たしている場合に限り、許可を受けることができます。
ここで、重要なことは原則に対しては例外があるということです。
すなわち、原則不許可であっても、例外的に許可を受けることができる場合があるということです。
この例外に当たるか否かをしっかりと見極めるにあたっては高度な専門性が必要となります。
<③農地転用が可能である場合に手続が必要となる関係行政機関の調査>
円滑な手続を実現するため、調査段階では、農業委員会「以外」の行政機関への手続きが必要となるか否かを判断します。
多くの方は、<農地転用手続=農業委員会へ必要書類の提出>とお考えになられることと思います。しかし、転用内容によっては、例えば、土地改良区や市区町村への手続きが必要となる場合があるため、とても注意が必要です。
このような周到な調査を経てようやく転用手続きのスタートラインに立つことができます。
このようにご自身が所有されている農地がそもそも転用可能な農地に当たるのかなどを事前にチェックしておく必要があります。
当然のように農地を転用できると準備を進めていたものの、対象農地が転用不可であった場合、準備に費やした費用や時間が無駄になってしまうからです。
どれだけ準備を周到にしたかによって、手続きの円滑さが大きく変わってきますので、時間をかけても周到な準備をすることをおすすめします。
今回は、1.対象となる農地の調査、2.農地の転用が可能かどうかの調査、3.農地転用が可能である場合に手続が必要となる関係行政機関の調査についてまで概要を記述しました。
次回の記事では、4.以降について概要を記述していきます。
さいごに
「田や畑を耕作目的以外に使いたい…、早く工事を始めたい…、許可を受けたが、気が変わり当初の内容とは違う目的で使いたい…等」の土地利用の目的によってお悩みをお抱えの方も多いと思います。
農地転用手続では、許可申請書に転用計画を具体的に記入することが求められますし、また、転用に際して行う被害防除策の概要も具体的に記入をすることが求められます。さらに、許可申請書の内容を立証するための多くの添付書類を用意する必要があり、提出機関等との打ち合わせも必要となります。
一般の方にとりまして、このように各方面との打ち合わせをはじめ、許可申請書やその内容を立証するための多くの添付書類を整えていくために、多くの時間や労力をかけることに対しては多大なご負担をお感じになられることと思います。
それでもご自身の利用目的に沿った土地活用に対しては、原則として、農地法等の関係法令によって農地を転用することへの規制が設けられています。
農地の転用につきまして、少しでもご心配なことがありましたらお気軽にお問い合わせ下さい。
お問い合わせ – アクシアークス行政書士事務所 (axiarqs.com)